2005年8月、日本で初めての試みである、ユーザーの感性を研究に反映させることを目的とした全学プロジェクト「九州大学ユーザーサイエンス機構(User Science Institute)」(以下USI)が誕生しました。 そのサテライトであるルネットは、一般のユーザーが普段は接することの少ない、最先端技術やデザインに身近に触れ、また、ユーザーの感性を研究にフィードバックする「産学官民の交流拠点」として設立。 近年、医学や福祉にユーザーサイエンスの考え方が意識され始めているように、人間の感性や科学の技術を分け隔てず、それらを融合したとき、新しいマーケットの可能性があると考えられています。ルネットは、一般消費者に近い場所で情報を発信し、また、ヒアリングを行い、それを今後の技術やデザインに活かすUSIのサテライトとして構想されました。 福岡市は、デザイン産業が盛んな都市でもあり、多くのアーティストたちを輩出するなど、感性豊かな文化都市として全国で注目されています。そんな背景もあり、USIは、文部科学省が推進する科学技術振興調整費「平成16年度戦略的研究拠点育成プログラム(スーパーCOE)」に採択され、現在活動が行われています。 そのルネットの照明計画をマックスレイが設計段階から担当。今回は、大学、行政、民間が融合して活動を行う新構想の拠点であるルネットの建築設計とライティングのコンセプトをご紹介します。
ルネットは、九州大学大学院芸術工学研究院教授 石田壽一氏によって設計されました。 大学の敷地外にある期限付きのスペースということもあり、当初は、施設はプレハブの仮設的なものとして考えられていました。 その中で石田教授は、プレハブ工法を採用しながらも単調な建物にするのではなく、ディティールにこだわり、建築物としてのデザイン性に重点を置き、「空間の美」を追求。また、このルネットの最大の特長となっているアルミ素材を活用。アルミは、リサイクル100%の素材として、環境負荷が低く、重量も鉄の約3分の1程度。これにより基礎が簡素化できたり、建築の際に材料の移動や持ち運びがしやすいなど、工期の短縮も可能になります。必要な強度を備えるためにスチールを一部使うなど、軽さを活かしながらも、強度の問題も解決。特徴的な外観は、白い壁とガラスのユニットが少しずつ角度を変えながら連なり、見る方向によって壁とガラスの見え方が変わり、連続的に表情を変える様子が人々の視線を惹き付けます。また、外からも施設内が見える状態にすることでオープンな印象をつくり、さらに、ヒューマンスケール(人間の身体の大きさ)を基準に構成することで、大きなものが目の前にそびえ立つ圧迫感ではなく、誰もが親しみやすい施設として設計されています。 「これからの公共施設のあり方は、時代のニーズを踏まえて、10年単位での変化が求められるのではないでしょうか」と石田氏は語る。また、「その流れに柔軟に対応しながら、空間の美を追求し、そしてリサイクルできるアルミ素材を用いた建築のひとつの形を、ルネットという施設で示すことができました」という石田氏の言葉の中に、次代の公共施設の在り方が示唆されているように思われます。また、この空間は、USIの活動の展開とともに、その用途に合わせてこれからも様々に進化していくのです。
光がなければ空間は認識できないものとして『空間の造形とは、まさに光の造形です』と、建築における光の重要性を石田教授が語るように、ライティングプランの打合せは、設計と同時に進められ、ひとつひとつの光が検討されました。 設計のコンセプトに呼応して、マックスレイは、最大限に照明効果を高めることを目指し、建築と空間の美しさを引き立てるライティングプランを実施。照明が違和感なく融合出来るよう、光の演出について提案しました。ときには、提案した照明計画によって駆体が決まっていく場合もありました。夜になると1階のガラス窓がダウンライトの光で照らされ、微妙に角度の違う面それぞれが浮き上がることで、特徴的な外観を演出。また、建物の中に入って最初に目にする受付では、間接光を中心に演出し、クリアな素材を用いた部分にも光を入れ、カウンター全体がひとつの照明器具のような面持ちで、訪れる人を心地よく迎え入れます。同じ1階の展示スペースでは、別注仕様の可動式照明を提案。スペースを囲むように取り付けられた上部のフレームに、スポットライトをスライド式に設置することで、照射エリアを変えることが可能に。さらに、アームをフレキシブルに曲げることができ、照射方向を自由に設定することができます。 天井には蛍光灯があえて光源が直接見える状態で設置され、アルミの造形がルーバーとなり反射板としての役割を果たしています。角度によって明かりの見え方に変化があり、空間に知的な印象を与えています。2階から3階へと続く階段は、ステップを固定している側面に間接照明が取り付けられ、足下の造形を幻想的に浮かび上がらせています。2階と3階が吹き抜けになっている多目的ルームでは、充分な外光を取り入れることもでき、また、照明も様々な用途に対応できる明るさを確保し、開放的で未来的な空間を演出しています。 照明については、インテリアとしての照明というよりは、建築と照明をいかに同化させるかが終始一貫したテーマになりました。様々な光のアイデアが生まれ、それを実現できたのは、石田教授の設計に対する想いが大きな吸引力となり、そこに生まれた共感が、建設的なエネルギーとして作用したからこそ。 ユーザーの感性を反映させる研究方法、リサイクルという視点と空間美を併せ持つ建築、そして建築と融合するライティング。それらは、現在では先駆的な試みですが、近い将来にはスタンダードと呼ばれるような、ひとつのスタイルとして確立されるのかも知れません。

















