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SOLANO

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SOLANOイメージ

美容室の新しい価値観を凝縮した、ミニマムな建築空間 灯りの調べは、自然光へのオマージュ

名称 SOLANO
業種 美容室
所在地 長野県松本市埋橋2-3-2
アサダビル1F・2F
オープン 2007年1月7日
床面積 211㎡
施主 有限会社ドゥーピー 麻田 智仁 氏
設計 タカラスペースデザイン(株)
桐田 靖彦 氏・田中 靖二 氏
http://www.takara-s-d.com
照明 マックスレイ(株)名古屋営業所
酒井 大輔

「リゾート型美容室」という価値観が共鳴し、そこから建築としての昇華が始まる/

長野県松本市の閑静な通り。駅から1kmほど離れたその場所は、近くにあがたの森公園や美術館、市民芸術会館などがあり、豊かな自然と文化が香る。2007年1月に完成したミニマムな洗練された建物は、周辺の趣と調和しながら、静かにその存在感を発している。それは、ある地方に吹く東風を意味する「SOLANO」という名の美容室で、既成の美容室という概念からは伺いしれない外観。その佇まいに、オーナーの麻田氏が考える美容室の新しい価値観が象徴されている。繁華街に立地する「都市型美容室」から脱却した「リゾート型美容室」こそが、これからの人々の心を捉え、やがて美容室のスタンダードになるという明確な理念のもと誕生した。東京で約12年間、さらに独立してから松本駅の近くで約8年間、ひとりの美容師としてお客様と接し続ける中で育んだコンセプトは、明確さとともに説得力を有する。
「ナンバー・ワン」ではなく、ひとりのお客様にとってかけがえのない「ファースト・ワン」であるためのサービスを目指す。「上質で上品な素材美を求めるすべてのお客様のために」というショップコンセプトのもと、建築計画、空間演出についても、オーナーとしての明確な方向性を打ち出し、それは「事業計画書」の中で説得力のある独自性の高い視点として綴られた。これからの美容室のあり方を示唆しているといっても過言ではない内容で、設計者を始めとした各分野の人々が、そのコンセプトに共感したからこそ、今回のプロジェクトは実現したとも言える。

明確なコンセプトを共有した、施主と設計者の「妥協のない」コラボレーション。

麻田氏と設計者である桐田氏の出会いは、このプロジェクトのオリエンテーションの場面であった。桐田氏は、事業計画書に綴られた内容に、ある感動を覚えた。理念の明確さ、お客様の動向を捉える視点の鋭さ、さらに建物や空間に対する想いなどに、大いに刺激を受けた。また、桐田氏自身が設計者として目指している方向性とも通じるものが感じられ、「この方となら、きっとやっていける」と、最初の段階で直感的に思ったという。麻田氏のコンセプトにもとづいて、それを編集し、コラボレーションしながらつくっていった」と語るように、オリエンテーションからオープンまでの1年を越える期間、コンセプトの実現へ向けて妥協のない“共同作業”が行なわれた。
麻田氏が掲げる「美術館・ラグジュアリーホテルを基本コンセプト」にした「お客様が非日常の世界へトリップする空間演出」という要望に対して、桐田氏はシンプルで洗練された空間を基本にしながら、多彩なシーンをちりばめ、それぞれが繋がりあう演出を提案する。細い入り口を通ってエントランスロビーに入ると、高天井の開放的な空間が広がる。さらにカットブース方向へ繋がる通路は「細くて高い」空間で、壁面にはミュージアムのように麻田氏がセレクトした写真がディスプレイされ、そこを通るお客様を非日常的な癒しの世界へと誘う。ミニマムなカットブースは直線的な光で演出され、開放的な窓からは中庭が見えるが、椅子に座ったお客様の視界には青い空と木々の様子だけが入る。余分なものを切り取るミニマムな演出は、空間だけではなく、お客様の目線にも施されている。2階には爽やかなイメージの「メイクブース」と、ラグジュアリーな印象の「ヘッドスパ」のスペースがあり、これらは「次世代サロンメニューの核になる」と麻田氏は考えている。
「建物のボリュームを取りながらシーンを多彩に切り替えることで、心を揺さぶりながら癒す」と桐田氏が語るとおり、上質な癒しの空間は居心地が良く、SOLANOにしかない貴重な時間をお客様に提供している。

最高のサービスを提供する空間の照明演出。それはミニマムな灯りと調光の「さり気ないおしゃれ」。

SOLANOにとって欠かせない構成要素として「光」のあり方を麻田氏は重要視していた。桐田氏からの話を受けたマックスレイの酒井も、SOLANOのコンセプトと麻田氏に共感した1人である。その思いを表現しようとした時、「これは、最高のサービスを提供するホテルである」という解釈が生まれた。
吹き抜けの空間も間接照明のみで構成し、天井には照明がない。また、1年中の日照時間に合わせた年間の調光プログラムによって灯りが制御され、夕暮れとともにゆっくりと自然に照度が上がっていく。決して派手さはないが、自然のリズムと調和する光の演出によって、クオリティの高い癒しを提供している。中庭の木は、紅葉して赤くなる秋には色温度の低い光、夏場の緑には白い光で照らす年間のプログラムを組む。2種類の色温度の灯りを設置し、季節によってどちらかをつける仕組みである。これもライティングの「さりげないおしゃれ」と言える演出。エントランス通路のブルーのLEDの光にも意味がある。ここで少し緊張感を与え、エントランスロビーに入ると吹き抜けの空間で開放される。そこは、自然光を豊かに取り込み、そのうつろいに合わせて間接光の照度が変わっていく。自然の営みへのオマージュともいえるライティングである。また、2階のヘッドスパの空間は、30分と45分のコースに合わせて、微睡みの灯りから目がさめるとふわっと明るくなるように調光。
このようにサービスと空間、自然の営み、そして灯りが一体となって癒しの時を奏でる空間を創出している。麻田氏の奥様の「帰りたくない空間」という言葉にも象徴されるように、施主としての事業への想い、そして空間への願望が具現化されている。また、そこに流れる音楽も麻田氏がセレクトしたもので、SOLANOの癒しの世界観は人の五感に響いてゆく。
「お客様と一緒に年齢を重ねてゆきたい」と麻田氏。SOLANOが提示する美容室の新しい価値観は、決して一過性のものでは無く、お客様とともに歴史を刻みながら、人へ、業界へと波動していく。

  • ミニマムに洗練された外観が、時間の経過とともにその表情を変える。

  • エントランスロビーから通路・カウンセリングブース方向を見る。
  • 自然光がそそぐ開放的なエントランスロビー。間接照明の柔らかい光が空間と調和する。
  • カットブース方向へと繋がる通路は、時間帯によって異なる表情を見せる。

  • 通路からエントランス方向を見る。「狭くて高い」空間にすることで、そこを通るお客様の気持の切り替えを促す。
  • 2階へ向かう時にはこの通路を使う。新しいストーリーの展開を予感させる演出。
  • 直線の美しさが心地よいカットブース。椅子に座ったお客様の視界に入るのは、青い空と木々の緑。

  • 中庭からカットブースを見る。植栽ヘの光は年間プログラムが組まれ、季節による木々の美しさが映える色温度で照らす。
  • 2階のテラスから中庭とカットブース方向を見る。
  • シャンプーブースからカットブースを見る。
  • 内装色の切り替えとライティングの変化でゾーニングしたシャンプーブース。カットブースとの仕切りを作らずに異空間を演出する。
  • オーナー自らがセレクトした写真がミュージアムのように迎える2階。メイクブースでは、深海から海面の陽光を感じるかのように、すりガラス越しのトップライトが効果的に広がる。
  • ヘッドスパの照明は、メニューの進行に合わせた自動調光プログラムで制御。空間とサービスと、そして灯りが調和する演出。
  • テラスからヘッドスパ方向を見る。内と外の連続性のある建築空間を演出。

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